オンキヨーの音へのこだわりから見る、オンラインライブ・フェスの今後の行方

コラム

■ホームシアターシステムを提供するオンキヨーホームエンターテイメントはこのほど、今後の事業の方向性にひとつ上のホームエンターテイメントを示した。今年1月に実施された世界最大級の家電見本市「CES」では、ホームシアターシステムの中核機器に位置付けるAVレシーバーの新製品を発表。コンサートホールや映画館での感動を自宅でも楽しめる製品の開発に注力している。

■新型コロナウイルスの影響で、2020年はリアル(有観客)で開催される音楽ライブ・フェスが激減した結果、オンラインで視聴できるライブが散見されるようになった。2021年はリアルで開催されるライブは予定されているものの、感染動向次第では中止・延期になる可能性が大いにあり、予断を許さない状況にある。それもあって、オンライン開催やアーカイブ配信に対する期待は今後も高まっていくだろう。また、配信の場合、通常のチケット料金よりも安価なケースが多いが、その理由のひとつに「配信では、リアルのライブに相応した体験価値を提供できない」点が挙げられる。視聴環境はテレビやPC、スマホ、タブレットであるため、当然、ライブ会場さながらの臨場感や没入感は体感しづらい。
一方で、配信コンテンツを「リアルの代替ではなく、全く別の体験」と捉える考え方もあるが、技術的なクオリティやユーザー満足度を踏まえると、詭弁・強弁の類いと見なされても致し方ない。同じエンタメコンテンツとして考えたとき、現時点では、リアルとオンラインで、それくらい大きな差が存在していることは事実である。

■ただし、その差を埋める活動に対しては、むしろ応援したい。音楽シーンや音楽体験そのものが進化・発展するアイデアやヒントが必ずあるからだ。そのような中で、オンキヨーがこだわりを見せるのは「音」。音楽の再生装置の開発を手がける同社にとっては当たり前の視点だが、実際には配信ライブを視聴する場合、それが音楽ライブであっても、視覚的な体験(映像)が重視されがちであることは言うまでもない。しかし、音は視聴者に対して、映像以上の臨場感や心理描写を伝えることができると確信するオンキヨーは、ホームシアターでその音を再現するべく、新たに採用した技術が音場補正機能「Dirac Live」である。

■「音場補正機能」とは、視聴者側の環境に合わせた最適なチューニングを自動で行い、理想的な音を再生させるためのものだ。劇場やコンサートホール、ライブハウスなど、会場の環境によって音響は変わるが、自宅で視聴する際も同様で、部屋の大きさや壁の材質、スピーカーの数や組み合わせ、置く位置によって聴こえ方は変わる。
Dirac Liveは、複数のスピーカーや複数のリスニングポイントに対し、マイクによる測定データから最適な補正結果を導き出す。そのため、広範囲のスイートスポット(音を聴く際の最適な位置やエリア)が実現できるとされている。一人で音楽に没頭したい場合や複数人で映画を楽し見たい場合でも、高品質の視聴体験ができる仕組みだ。

■五感で体験できるライブと同等の価値がオンラインライブ・フェスでも得られるようになるためには、少なくとも、視覚・聴覚に訴求できるコンテンツであることが前提である。今後は、視覚的満足度の向上に対して後追いになりがちな聴覚的満足度の向上や潜在的ニーズの発見が進み、さらに、その上で「実空間ならではの特性」「オンラインならではの特性」によって分岐・差別化され、ライブ参加の際の選択肢が増えていくことを願う。