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【茨城】3年以内に3大フェス規模目指す「LuckyFes」考察。ロッキンとの比較

開催概要と開催に至るまでの経緯

■2022年7月23日と24日に国営ひたち海浜公園で「LuckyFM Green Festival」(ラッキーエフエム・グリーンフェスティバル/LuckyFes)が初開催される。

■会場である茨城県・国営ひたち海浜公園は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL(ロッキン)」が2000年から2019年まで(2020年および2021年は新型コロナウイルスの影響で中止)開催されてきた歴史があったが、2022年のロッキンが千葉県(千葉市蘇我スポーツ公園)へ場所を移し開催されることを受け、LuckyFesの開催が発表された。

ロッキン2022が茨城県で開催されない理由

■ロッキンの総合プロデューサーである渋谷陽一氏は、千葉市蘇我スポーツ公園へ移転を決めたことを2022年1月に発表。HP上で「何万人の参加者が密にならずにライブも楽しめ、移動もほとんどない環境を作ることは、国営ひたち海浜公園では不可能と判断せざるを得ませんでした」とコメントした。2019年のロッキンは、5日間で33.7万人を動員した実績を持つ。

■また、2021年のロッキンは茨城県・国営ひたち海浜公園で開催が予定されていたが、開催直前である約1ヶ月前に茨城県医師会から要請(事実上の中止要請)があり、開催中止を発表した経緯がある。

2021年年7月2日、茨城県医師会は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」主催者に対し、要請書を提出。内容は、今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期を検討すること。さらに、仮に開催する場合でも、更なる入場制限措置等を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと。ロッキン側はそれに従い、7月7日に開催中止を発表。茨城県医師会は中止発表を受け、7月14日にHP上で「要請書の趣旨をお汲み取りいただき、ご英断いただきましたことを、深く感謝」した。

■一方、LuckyFesは2日間で約3万人の来場者を見込む。過去に開催されたロッキンと比較すると開催期間や来場者数規模は小さいが、今回の開催における会場外の新型コロナ対策として、以下を設定した。

・周辺駅ご利用の際は地域の方の日常に支障をきたさぬよう係員の誘導に従ってください。
・地元還元の観点は大事にしたいと考えますが、飲食店の営業につきましての開催時期レギュレーションに倣った行動にご協力ください。その際の近隣での路上のみや屯する行為は禁止とさせて頂きます。巡回の係による声掛けにご理解とご協力をお願いします。
・交通系ICカードの事前チャージなどで駅構内の混雑回避にご協力ください。
・新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」の事前インストール
・アマビエの事前登録

3大フェスに匹敵する規模を目指す

■運営委員長の堀義人氏は「3年以内に3大フェスになる規模にしたいと考えています」と述べている。国内3大フェスとは「フジロックフェスティバル」「ロッキン」「サマーソニック」のことを指すが、それらのフェスは1日で3万人以上を動員する。フェスの「規模」は必ずしも動員数の多寡だけでは決まらないが「国営ひたち海浜公園で開催される夏フェス」に対する期待は大きい。高い志を持った挑戦とも言える。

3大フェス(2019年)開催地と開催期間動員数
FUJI ROCK FESTIVAL
(フジロック)
新潟県]苗場スキー場
3日間開催(7月下旬)
11.5万人(前夜祭を含まない)
備考:前夜祭を含めると4日間で13万人が来場
ROCK IN JAPAN FESTIVAL
(ロッキン)
茨城県]国営ひたち海浜公園
5日間開催(8月上旬)
33.7万人
SUMMER SONIC
(サマーソニック)
[東京会場]ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ
[大阪会場]舞洲SONIC PARK

3日間開催(8月中旬)
30万人(東京18万人+大阪12万人)
コロナ禍以前(2019年)の国内3大夏フェスの動員数

ロッキンとの差別化

■LuckyFesは立ち上げにあたり「茨城のフェス文化の灯を消すな!」を合言葉にしている。茨城のフェス文化はロッキンと共に培ってきたものであることは言うまでもないが、ロッキンとは一線を画し、新しいフェスとしての方向性を示す必要もある。その上で、LuckyFesは5つのコンセプトを掲げている。

1.グリーン:環境にやさしく〜茨城の豊かな緑が生い茂る場所で、地球環境に徹底的に配慮して開催
2.クロスオーバー:LuckyFMらしさ〜局の番組に連動させた多様なジャンルの音楽を提供
3.テーマパーク:参加型フェス〜地元茨城の食や国内外のアートも楽しめる
4.ファミリー:未来の子供たちに向けて〜子連れ、家族でも安心して楽しめる
5.安心安全:医療団体と連携して新型コロナ対策や熱中症対策を万全にする

■掲げたコンセプトと出演アーティストのラインナップを見る限り、幅広い層を取り込みたい意図は伝わってくる。もちろん、初開催かつ短い準備期間のため、ブッキングの都合という面もあっただろうが。

■ちなみに、LuckyFesと今年8月に開催されるロッキン、どちらにも出演するアーティストは10組ほどで、Awich(エイウィッチ)、Creepy Nuts(クリーピーナッツ)、Lucky Kilimanjaro(ラッキーキリマンジャロ)、MAN WITH A MISSION(マン・ウィズ・ア・ミッション)、Novelbright(ノーベルブライト)、SIRUP(シラップ)、SKY-HI(スカイハイ)、yama(ヤマ)、マカロニえんぴつヤユヨ

■また、LuckyFesは「ロック」のイメージ払拭を図っているようにも感じる。つまり、LuckyFesが守りたい「フェス文化」は、あくまでも「フェスティバル=祭典」であり、いわゆる「ロックフェス」を指すものではないということだ。

■ロックフェスはコロナ禍において、ずいぶんと悪者扱いされてきた。ロックフェス、音楽ライブはもれなくクラスターの発生源だと言わんばかりに、開催延期や中止、自粛の要請が相次いだ。現在では、多くのライブ・フェスが開催できる状況に戻りつつあるが、それに至るまでには、主催者をはじめとした関係各所の想像を絶する努力と執念があったことだろう。

■そんな厳しい世間の目が向けられた環境で、新たなフェスを生み出すとなると足枷だらけなのは当然であり、“お利口さん”なフェスに成らざるを得ない。今や単なる記号でしかない「ロック」という曖昧な言葉も、また、その曖昧さゆえに「馬鹿で不良」というイメージを特に否定も肯定もせずコツコツと蓄積し続けてきた歴史も、これからのフェスには不要なものかもしれない。必要なのは、潮目が変わるタイミングを見逃さないことと、あとは・・・・・・運?

■「これからはRockよりもLuckだ」。そんな思いも込められていたりして。